2018年01月26日(金)

延寿通信 第174号 2018年2月 [最新情報]

 張り切る銭湯 西も東も

10月10日は数字のみ並べると「1010」になりますので、これを「セントウ」と読み、「銭湯の日」が生まれました。また、以前はこの日、10月10日は「体育の日」でしたので、運動して汗をかいて銭湯でさらりと流す、という意味もあって、1996年に東京の浴場の組合がこの日を「銭湯の日」に決めたのです。
 東京の銭湯では新しい客を求めて、昨年の秋、いろいろの行事を実施して、客を迎えました。銭湯の日には、東京都内では「ラベンダー湯まつり」があり、地区によっては初摘みの生ライムが湯に浮かぶ「ライム湯」、あるいは「みかん湯」なども行われました。また、都内の一部の銭湯では、高齢者に「敬老入浴券」を配布して、銭湯がサービス料金で入れるようにする地区もありました。
 昨年の秋から年末にかけて、銭湯に関する新聞記事が目立ちました。今回はこれらの記事を2、3ご紹介しましょう。新聞はいずれも関西版です。

1.活路もとめて沸く個性 大阪の銭湯
 この表題は日経新聞(2017年10月12日夕刊)の社会面の見出しです。脱皮する大阪市内の銭湯として、4ヶ所の銭湯が写真入りにて紹介されています。
その4ヶ所を、ここにまとめると見出しは次の通りです。
@入浴にちなみ女神像−-源が橋温泉
A宿泊訪日客 入り放題−−新世界ラジウム温泉 昭和湯
Bライブやオフロンピック--朝日温泉
C長居のランナーに的------いりふね温泉
 それぞれの記事を簡単に引用・説明しましょう。
 最初に、源が橋温泉です。この温泉は1937年に建造された公衆浴場で大阪市生野区にあります。外観というか、建物前面の客の入り口に当るところですが、これがすごいのです。公衆浴場というのは足の便のいい町の真ん中にありますので、この温泉の回りはあいにく建物が入りこみ、遠望の利かないのが残念ですが、建物正面に自由の女神が2体立っています。それぞれ女神はトーチを掲げており、それが温泉のマークであり、ここ独特の姿なのです。
 この源が橋温泉の建物は1998年に、公衆浴場としては日本では初めて、登録有形文化財に指定された由緒あるものです。この価値ある建物を見るために入浴客は北海道から九州から来るそうです。
 新世界ラジウム温泉というのは、大阪の繁華街の一つ、通天閣の真下にあります。通天閣は古くからの大阪名物ですので、この近辺は訪日客が多いのが特徴です。番台に坐るオーナーは外人さんとの会話を楽しみにしているそうです。中国から来た女性客は番台に男性が坐っているのにビックリしたといいます。
 同様に、東淀川区にある昭和湯も訪日客に人気の銭湯です。近くのゲストハウスと提携して、ここに宿泊した外人さんは銭湯入り放題のサービスであるため、大阪に来た欧米からの訪日客はわざわざ、この湯へ足を運ぶ人もあるそうです。
 朝日温泉は住吉区にあって、ここでは、さまざまなイベントの催しあるのが特徴で、イベント温泉とも言われているそうです。銭湯ライブでは打楽器やギターの音色が聞こえてきて、客はタコスやカレーをつまんで演奏を楽しむのだそうです。ここでは音楽以外に、桶やタオルを使ったゲーム「オフロンピック」の企画もあります。
 いりふね温泉は阿倍野区にあるのですが、この近辺のランナー、走ることを楽しみにしている人たちが集まってきます。毎日、40人ほどのランナーが会社帰りにこの温泉にやって来て入浴を楽しみます。この温泉は大阪市の代表的なグランドである長居競技場の公園の近くにあって、ランナーは荷物を預け、ジョギングの後に入浴できるようになっています。

2.お風呂屋さんという遊び場
 銭湯は衛生だけではなく、町の溜まり場、精神的な救いにもなっていると、作家の森まゆみは東京台東区の銭湯の様子を紀伊国屋書店のPR誌に書いています。この記事の中には、東京の戦前の懐かしい銭湯の話が満載されています。例えばこんな記事が出てきます。
「家にもあるけれど、毎日(銭湯へ)ゆきます。心からリフレッシュできるし、ぐっすり眠れる。こんな安い健康法はない」
「(銭湯に入ると)いやなことがあっても大概のことは忘れられる。裸の人を見ると、まあこれでもいいかと思う」
「お風呂友達が出来るし、町であっても挨拶する。さびしくなくてうれしい。
この人たちは心から銭湯の湯を楽しんでいるかのごとくです」 

3.湯〜モア銭湯 客層開拓へ
 昨年秋、11月4日の朝日新聞は社会面のトップ記事で
「湯〜モア 銭湯 客層開拓へ 沸く沸く 催し 歌詠み婚活 オフロンピック マジック 」
 と、銭湯の状況を見出しで大々的に取り上げております。
 記事では「婚活、オリジナル競技、マジック---各地の銭湯がユニークなイベントで、新たな客層の開拓に挑んでいる・・・・」と大阪府内の銭湯のいろいろな催しを大きな写真入りにて紹介しています。
 銭湯は各地で減少していると記事では報じています。厚生労働省によると、2016年度末の統計では、大阪府内の一般公衆浴場は、都道府県の中ではもっとも多い624軒ですが、10年前のデータでは1030軒でしたので、この間に4割減ったことになります。このように銭湯客の大幅減少を招いた理由として、朝日新聞では、風呂付の住宅が普及したこと、さらに、シャワーでのみ済ませる人の増加、人前で裸になるのを嫌がる人が少なくないこと、などをあげています。
 このような傾向を受けて大阪府の浴場の組合では、新たな客の取り込みに意欲的です。たとえば、訪日外人客向けに銭湯の冊子を作ったり、一般の走る人、ランナー向けのサービスとして、着替えや貴重品預かり制度なども始めていると記事では紹介しております。
 婚活イベント「歌垣風呂」の催しをご紹介しましょう。
 壁の向こうから歌が聞こえてきます。
「手をつなぐ 暑いと何度も払うけど 何度だって つかまえて欲しい」
「記念日に 僕が贈ったイヤリング ここぞというとき 風にたなびく」
これは、大阪府池田市平和温泉での歌垣で、男女の浴室の壁を境に、男女が歌を詠みあうのです。歌垣は万葉集にも出てきますが古代から伝わる男女の求愛行事なのです。
 大阪市内の朝日温泉と昭和湯は風呂桶や湯船を活用してオフロンピックを開催しています。
 大阪府門真市の巣本温泉では番台で店主の鈴木さんがマジックを披露します。客の大半は高齢者ですので、地域の子供を呼び込もうと、今年の夏には、流しそうめん大会を催しました。
「今は待っていても客は来ない。イベントを通じて銭湯から情報を発信してゆかないといけない」と、店主は述べています。

4.「湯ったり オフロンの旅」神戸の銭湯
 これは昨年末12月23日の朝日新聞の記事です。
 神戸では、市内にある銭湯39箇所を巡るスタンプラリーが、昨年の秋に幕を開け、人気を集めています。銭湯で無料配布している「ご朱印帳」を持って、入浴客は順番に銭湯を巡ります。「ご朱印帳」のスタンプの数に応じて賞品が貰えます。この催しは神戸市の主催で、市の浴場組合連合会と協力して実施しています。当初、5千部作った「ご朱印帳」が、早々に品薄になったので、さらに4千部増刷したということです。このラリーはこの3月まで行われます。
 神戸市の銭湯は、1995年の震災で、160箇所あったのが、100箇所に減ってしまったのですが、後継者不足もあって、先は決して明るいとはいえない状態です。しかし、先の震災時に、早い復旧で銭湯を再開し、多くの市民に喜ばれたということがありましたので、この体験を生かして、市内の銭湯は入浴客へのサービスに努めています。
 
 参考までに、本欄の記事では「一般公衆浴場」の銭湯を対象にしています。この一般公衆浴場というのは、日常生活で保健衛生上必要な施設で、例えば、ここで取り上げた銭湯が該当します。一方、保養や休養目的の健康ランドやスーパー銭湯、スポーツ施設の浴場は、銭湯の一般公衆浴場とは別で、これらの入浴施設は「そのほかの公衆浴場」に分類されています。

<参考文献>
森まゆみ、30年後の谷根千、scripta vol11,no4、紀伊国屋書店、(2017年)
東京都浴場組合の銭湯情報「東京銭湯」(2017.9.3)を参考にしました。
・新聞記事は各欄に表示しました。

Posted by 管理者 at 16時39分

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