2017年12月22日(金)

延寿通信 第173号  2018年1月 [延寿通信]

 柚子湯とミカン風呂

--冬の暖かいお風呂に

 寒さ厳しいときの風呂には柚子(ユズ)湯がお奨めです。冬至には柚子湯に入るというのが習慣で、各地の銭湯では柚子湯をわかして、入浴客をもてなしていました。この冬、冬至は昨年12月22日でした。
冬至に湯治というのは、冬至が湯治に結びつくからという説があります。たしかに、柚子湯は湯治には欠かせない薬湯になります。寒さ厳しいこの冬の湯、今からでも遅くはありませんので、柚子の湯に入ることを試みてください。
 年も変わって、いよいよ春を迎える頃となりましたので、湯治の湯は柚子のみではなく、ミカンにもチャンスを与えてもらい、ともに柑橘類の湯を楽しむことにしましょう。
 柑橘類のおいしい季節になりました。食糧の乏しかった戦後、70年前にさかのぼりますが、この頃の正月といえば柑橘類が大事にされました。畑は野菜作りにもっぱら利用されましたが、山の産物であるミカンは供給が途絶えることなく、暮らしに欠かせない食糧であり、果物でした。野菜を作る家庭菜園では、果物どころではなく、空腹を満たす植物が大事にされました。
 戦後の、この頃の冬は正月に沢山のミカンを食べましたので、廃物利用でミカン湯は大繁盛でした。 最近は、ミカンの湯、柚子湯では実のまま使うのが多いのですが、当時ではミカンは、もっぱら皮を利用しました。ミカンを食べた後、皮を集めて日に干して、乾燥させた皮を使いました。ミカンの皮は,剥いたそのままではなく、乾燥させたほうが香りはよく、保存も効きました。

1.ミカンのなかま
 柑橘(かんきつ)類と言う植物群は温州(うんしゅう)ミカンが代表で、常緑樹であり、特に果実を対象に用いられる木々をいいます。柑橘類にあるミカン科は、ミカン属、キンカン属、カラタチ属、さらにゴシュユ属、キハダ属、サンショウ属に分けられ、特に、ミカン属にはおなじみの果物が含まれます。この中に温州ミカンがあり、オレンジもその一つです。後半にあるゴシュユ属、キハダ属は、食用というよりも漢方薬の材料で、特にキハダ属にある、オウバクは、胃腸薬の主要薬物です。
 このように、ミカン属は食用だけでなく、薬用でも重要な位置を占めております。薬用では、主として精油成分が豊富な皮を用い、水気たっぷりの実を使うのは、特定の果物、しかも、未熟な果実の場合です、量的には少ないです。ミカンの皮である漢方薬では、陳皮(チンピ)と言う名称で、医薬品として応用範囲は広く、漢方処方の多方面に使われています。ほかに、カラタチの皮もキジツという名前で薬用に使われています。山椒(サンショウ)も漢方薬の一つですが、これはスパイスとしての利用が多いようです。
 ミカン属を、さらに細かい分類を見ると、ミカン類、タンギール類、オレンジ類、キジツ類、グレープフルーツ類、香酸柑橘類、そのほかがあります。最後に並んでいる香酸柑橘類には、レモン、ユズ、スダチなど、酸味があって香りのいいミカンが並んでいます。
 柑橘類という言葉は、ミカンの仲間をまとめて言う場合によく使いますが、植物学の立場では、この用語は使いません。

2.柑橘類と風呂の湯
 柑橘類の爽やかな香りは風呂にぴったりです。寒い時でも、暑い時でも柑橘類の風呂は気分いいものです。しかし、柑橘類の実の収穫時期は、大部分が秋以降となりますので、どうしても冬が主体になります。
 柑橘類では量的に最大なのが温州みかんで、これは日常、もっとも多く出回ります。温州みかんについで第2位にあるのが伊予柑です。伊予柑の収穫時期は11月に始まり、ピークが1〜3月で、4月までは店頭にありますが、温州ミカンと同じように冬の果物になります。伊予柑の仲間には、はっさく、甘夏、ネーブル、デコポン、ポンカンなどがありますが、これらの収穫時期は、大体、冬ということになっています。
 ユズ(柚子)というのは、料理、冬の風呂に欠かすことの出来ない果物です。ミカンとは違って、香酸柑橘類にありますが、ここにはレモンが含まれ、香りの代表として、これまた広く使用されています。ただし、レモンはじめとして、この香酸柑橘類というのは、実を風呂に入れるというのは少なく、色彩と香りを生かして日本料理に用い、食用が中心です。食用といっても温州ミカンのように実を食べることはありません。ユズには、香りとともに強い酸味があって、それが食の分野に大事な役目を持つこともあります。風呂の湯には、とにかく香りが主役であり、酸味との関係は少ないようです。
 ユズ湯の場合は実が使われ、皮のみでは使いませんが、一つには温州ミカンと違ってユズの性格で、実が食用になることは少ないので、皮のみの利用は限られます。銭湯のユズ湯の現場を見ていると、広大な浴槽にぷかぷかと湯の表面に実が浮かんでユーモラスな光景を生みだしています。

3.香りの源泉 ミカン科の成分
 風呂にミカン科が用いられるのは特有の香りを有するためで、この香り成分は精油のリモネンが主成分です。リモネンという成分は、ミカン科の実の皮の部分にあり、皮を向いていると液体の詰まったぶつぶつが目立ちます。この液体が油の成分リモネンです。ミカン科の実のいい香りは、このリモネンが主役です。リモネンはサンショウ、ダイダイの主成分でもあり、またハッカのメントールに近い構造をしており、いずれも香り役目を担っています。また、リモネンの化学構造式は香りのいい樟脳のカンフル、リュウノウのボルネオールにも近い構造です。ミカンの皮には、ほかに、精油のピネン、テルピネンのほか、シネフリン、配糖体ヘスペリジンなどが含まれています。酸味の強いミカンにはクエン酸、酒石酸などの酸が多く含まれています。例えば、ユズ、ダイダイなどです。ナツミカンもこの仲間に入ります。
 ミカンの実の甘さは果糖によります。ミカンの名前は、もともとは蜜柑(みつかん)で、蜜のように甘い柑橘から来たといいます。この甘みの成分は果実の糖分です。
 ミカンの香りの爽やかなところは、漢方の世界では、気の調整剤として生かされていますが、漢方の「気」というのは気分の気とはやや異なり解釈が難しいので深入りはしませんが、気を調整するというのはストレス解消が作用の一つです。風呂に入れたミカン、ユズは、このストレス解消に役立っているのでしょう。ミカンの皮である漢方薬・陳皮は、消化不良、去痰など、消化器官や、呼吸器官をスッキリさせるのに使われます

4.ミカン科の産地と産出量
 柑橘類というと産地のナンバーワンは愛媛県です。愛媛県は「かんきつ王国」とPRしているほど、柑橘類の全国一を誇っています。愛媛の柑橘類(2012年)では伊予かん、ポンカン、河内晩柑ほか、数種が全国一で並んでいます。また、ミカン、デコポン、レモンは全国第2位です。
 温州ミカン(2016年)単独では産出額1位は和歌山県で、次いで愛媛県、第3位が静岡県です。この3県で、ミカン収穫量の半分を占めています。順位は、年度によって入れ替わりもあり、例えば、2011年では、@和歌山とA静岡はほぼ同じ、次いでB愛媛、C熊本、D佐賀の順になっていますが、最近の順位は
次表の通りです。
2016年度 ミカン収穫量 全国 805,100トン
1.和歌山県  161,100トン
2.愛媛県   127,800
3.静岡県   121,200 
4.熊本県   84,000
5.長崎県   52,000
 ここで取り上げているミカンというのは、大部分が温州ミカンです。次のユズの生産量と比べて見たら分かりますが、温州ミカンの生産量はユズの10倍以上です。
 ユズは2014年のデータでは、愛媛は全国第3位で、1位は高知県が断然トップで、全国の半分近くを産出しています。
2013年度 ユズ収穫量 全国 22,934トン
1.高知県  10,859トン
2.徳島県  4,025
3.愛媛県  2,833 
4.大分県  1,291
5.宮崎県  1,037トン

 中国には温州という有名なミカンの産地ありますが、日本の温州ミカンはこの場所の名前を借りてはいるものの、植物上は一切、関係はありません。
 参考までに、世界のミカンの生産量・消費量では、断然トップが中国で、次いでEU、3位に日本、次いでロシア、韓国、アメリカと続きます。日本のミカン生産量・消費量は中国の1割です。

<参考文献>
統計から見た愛媛県--柑橘類だけじゃない、愛媛の日本一 PDF 総務省(2017)
伊藤美千穂監修:生薬単 第2版、劾TS(2012)
曽野維喜:臨床漢方処方学、南山堂(1996)

Posted by 管理者 at 14時43分

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